富士山の銘水 陸上部

FEATURE特集

2024.11.29

長距離陸上競技

東日本実業団対抗 駅伝競走大会

区間10位の力走を見せたアンカーの篠原。

ニューイヤー駅伝連続出場叶わず
富士山の銘水陸上部 創部3年目の試練

 フレシャスを運営する富士山の銘水株式会社が、スポーツを通じて地元の山梨県に恩返しをしたいという思いから発足した富士山の銘水陸上部。昨年は、初挑戦でニューイヤー駅伝出場の切符を手にする快挙を成し遂げたが、創部3年、2度目の挑戦となる今年は厳しい試練が待っていた。

※登場する選手名は敬称略しています。

2度目の挑戦は序盤の出遅れから苦しい展開に

 2024年11月3日、ニューイヤー駅伝の予選会となる東日本実業団駅伝が行われた。東日本地区から先に進めるのは10チーム。昨年より2つ減った出場枠を懸けて、名門チームを含む40の実業団がしのぎを削った。

 1区からつまずいた。GMOインターネットグループの吉田祐也が独走した影響で、瀬戸祐希が食い下がった2位集団もかなりのハイペースになっていた。5kmを14分12秒と速いタイムで入ったのだ。しかし前半を抑えたチームが後半で順位を上げたのに対し、瀬戸は大きくペースダウンしてしまう。トップとは2分01秒差の18位で2区に中継した。

 前回1区で区間7位とチームに良い流れを作ったキャプテンの才記壮人は、今年は故障の影響で東日本予選のメンバーに入れなかった。同じ1区を走る瀬戸のサポート役を今回は務めていた。「緊張していたのでほぐそうとしたのですが…。瀬戸が一番悔しかったと思います。中継後はかなり引きずっていましたが、落ち込みすぎずに前を向き始めました」

 インターナショナル区間の2区でも、前回区間9位のキサルサク・エドウィンが区間16位と振るわず16位に上がるにとどまった。海外レースに積極的に出場してきたことも影響したのか、東日本予選に合わせきれなかった。

インターナショナル区間を走るキサルサク エドウィン。
インターナショナル区間を走るキサルサク エドウィン。

 その後の選手たちは6区終了時まで、16位の順位から抜け出せなかった。最長区間の3区は、1万メートルチーム日本人最高記録を持つ栗原啓吾が担ったが区間18位と伸びなかった。3区終了時点で1つ前を行く小森コーポレーションと1分26秒差がつき、後ろのチームとも差がある“単独走”になった。特に東日本予選のように向かい風の強いコースでは、単独走は不利に働く。

沿道に駆けつけ、3区の栗原啓吾に声援を送る富士山の銘水応援団。
沿道に駆けつけ、3区の栗原啓吾に声援を送る富士山の銘水応援団。

 小森コーポレーションとの差を4区で1分10秒、5区で51秒に縮めたのは健闘だった。しかし6区で1分20秒まで差が開いて7区のアンカーにタスキが渡った。

「来年につながる走りを」アンカー篠原が一人気を吐く

 瀬戸とキサルサクを伴ってフィニッシュ地点に向かった才記は、「厳しい位置での走りを強いられましたが、誰か1人でも順位を上げる走りをすれば来年につながる」という思いでレースを見守っていた。その思いに応えたのが7区の篠原楓だった。

 昨年も7区で3人を抜き、11位でニューイヤー駅伝出場を決めた選手である。だが今年は16位でタスキを受け、難しい状況で走っていた。「1つでも順位を上げて、来年につなげたいと考えていました」。篠原は最初から速いペースで入り約400メートルあった差を詰めていき、10km付近で小森コーポレーションを抜き去った。

 その走りはチームメイトたちにも少なからぬ感銘を与えた。「篠原も4月中旬まで故障をしていて、良い状態とは言えませんでした。(故障明けと単独走が重なる)逆境を跳ね返す走りでした」才記)。最後まで諦めずに走ったが15位に上がるのが精一杯だった。ニューイヤー駅伝出場権を得られる10位には届かなかった。

1つ順位を上げ、総合15位でフィニッシュ。
1つ順位を上げ、総合15位でフィニッシュ。

 高嶋哲監督は敗因を「1区の出遅れが大きく響いてしまいました。1区は走力だけでなくメンタルの強さが必要な区間です」と分析した。「エース区間を走れる選手が1区も走るようでないと通用しません。2区のキサルサクも期待を大きく下回りました。来年、必ずリベンジすると言っています」

 東日本地区はニューイヤー駅伝予選の中でも最もレベルが高い。だがそれに怯んでいては到底、勝ち抜くことはできない。「10位を目指すのではなく、1~3位に向かって行く強化計画が必要」と高嶋監督は強い調子で話した。

 昨年は参加1年目で、才記の好走などもあり東日本予選を突破した。そのときの駅伝が鮮烈な印象を残しただけに、今年の結果は残念に感じられる。才記は昨年と今年の駅伝に、次のような違いがあったという。

「去年はまさに勢いの駅伝でした。初出場で、怖い物知らずで、思い切り挑戦できた結果です。それに対して今年は試練の駅伝でした。故障者も出て、本当のチーム力が試される駅伝でしたね。今回突破できなかったことの意味は、我々のこれからの結果で変わってきます。良い結果を出せれば、チームが前を向くキッカケになった、と言える駅伝になる」

 29歳の才記は1500メートルの日本トップ選手で駅伝の経験も多く積んできている。「(駅伝で目標達成に失敗すると)お通夜のような雰囲気になるのですが、心が折れた選手は1人もいなくて、みんな来年のこの大会を見据えて課題を話し合っていました」

 富士山の銘水チームは再び、上昇曲線を描くためのスタート地点に立った。

東日本実業団対抗 駅伝競走大会 11月3日(日)埼玉県(7区間76.9㎞)

区間

距離

選手

総合順位

1区

11.6㎞

瀬戸 祐希

18位

2区

8.0㎞

キサルサク エドウィン

16位

3区

16.5㎞

栗原 啓吾

16位

4区

9.5㎞

湯本 樹

16位

5区

7.8㎞

鈴木 景仁

16位

6区

10.6㎞

小林 竜也

16位

7区

12.9㎞

篠原 楓

15位