2024.06.14
長距離陸上競技
第78回山梨県選手権男子4×1500mリレーに富士山の銘水チームが出場し15分25秒51で2位に入った。目標としていた日本記録更新はできなかったが収穫の多いレースになった。
甲府市の小瀬スポーツ公園陸上競技場で行われた陸上競技山梨県選手権初日の6月1日、注目のレース、男子4×1500mリレーが実施された。
五輪実施種目ではないため特殊種目といわれるが、日本記録(15分19秒33)が公認される正式種目である。富士山の銘水4選手(瀬戸祐希、佐藤颯、鈴木景仁、才記壮人)は全員が、この種目は初体験だった。
ケニア選手だけで構成される山梨選抜連合チーム(ブライアン・キピエゴ、ネルソン・マンデラ、ジェームス・ムトゥク、キサルサク・エドウィン)と2チームだけの出場だったが、山梨選抜連合が強く競り合いに持ち込めなかった。それに加えて選手たちは、駅伝でタスキをかけて走ることには慣れていても、バトンを手に持っての1500mは走りにくさを感じていた。1走の瀬戸祐希は「3回バトンを持ち換えました」と苦笑した。
だが3分50秒台(非公式計時。以下同)だった自身のタイムについては真顔で反省する。
「1人3分50秒平均で走れば日本記録に手が届いたのですが、ラスト300mでスピードを上げられませんでした。そこの走りで3~4秒は違ったと思います」
山梨選抜連合チームに4秒差をつけられて、2走にバトンを渡した。
2走の佐藤颯は「日本記録を狙うワクワク感」をもって走り始めたが、「どういうレース運びるかイメージができていなかった」という。一時は山梨選抜連合に30m以上引き離されたが、最後は10mくらいまで差を縮めてみせた。だが3分51秒台だった自身のタイムについては「貯金を作れなかった。悔しかった」と無念の表情を見せた。
それでも2走終了時点では日本記録更新も可能なペースだった。しかし3走の鈴木景仁が3分55秒台と想定を下回った。「最低でも3分48秒前後で走りたかったです。足を引っ張ってしまいました」と苦渋の表情で振り返った。
山梨選抜連合とは50m以上の大差がついていたが、4走の才記壮人は1500mで5月12日に3分38秒53と、今季日本3位のタイムで走っている。「日本記録ペースに対して余裕があっても、難しい状況でも、3分45秒を切る」と強い意思を持って走り始めた。
だが3分48秒台の走りとなり、15分25秒51でフィニッシュ。約6秒日本記録に届かなかった。
「日本記録更新は達成できませんでしたが、1人あたり1.5秒なら不可能な記録ではなかったと思いますし、来年も機会があるなら再チャレンジします」
最年長の才記は、悔しさの中にも充実感を漂わせながら話した。
才記は今回の挑戦を「6月末の日本選手権優勝」に結びつけたいと考えている。そこから「来年の世界陸上東京大会で日本代表入り」を狙って行くことが個人としての目標になる。
そしてチームにとっても大きなプラス材料があったという。
「佐藤と鈴木は今年が、初めての日本選手権出場になります。今回山梨県民の皆さまの目に触れるレースができ、3週間後の日本選手権でも注目してもらえたら2人もやり甲斐を感じられる。シーズン前半でこういうチャレンジをしたことで、秋から冬の駅伝でもチームの一体感を作りやすくなります」
日本記録を出すことでチームに勢いを付ける効果を期待していたが、高嶋監督は「一番の狙いは地域貢献でした」と明かした。
「駅伝は皆さんから注目していただけますが、陸上競技は駅伝だけではないし、富士山の銘水チームは個人でも活躍したい。駅伝以外のシーズンに、イベント的な楽しさも有する種目で、皆さんと一緒に喜べる活動をしたかった」
今回の挑戦は富士山の銘水チームが発案したが、大会を主催する山梨陸協も大型スクリーンに応援の文字や観戦に役立つ情報を出したり、乗りの良いアナウンスをしたりしてイベントとして盛り上げてくれた。スタンドには山梨県選手権の他種目に出場した中学生や高校生が多数いて、その父兄も一緒に富士山の銘水チームのチャレンジを応援してくれた。
アンカーの才記がフィニッシュするとスタンドからは、温かい拍手が送られた。日本記録更新こそ達成できなかったが、富士山の銘水チームが挑戦したことの意味は大きかった。